イベントゾーン

ワークショップレポート

子どものための印刷体験 (2013.8.23)

概要

「活版印刷」で、ダイアリーに自分の名前を入れよう。
活版で文字を刷るほかに、本の作り方も体験できるワークショップ。
”本作り”をちょっぴり体感できる場です。


レポート

印刷のなかでも最も歴史ある「活版印刷」は、今ではあまり見ることができません。
でっぱりにインキをつけて紙に押し付ける、原始的な技術。
ぐっと押した後の紙のへこみや、インキが部分的にたまった様子には、何ともいえない愛嬌があります。

印刷の基本を実際に体験して、ものづくりを楽しみながら、身近にある印刷物が、どのようにできているのか発見できる、このイベント。
自分の手から物が生まれる様子には、活版印刷を知らない子どもたちも、感動を隠しきれないようでした。

印刷職人気分が味わえる自分だけのダイアリーを作りに、いざ出発!


【1】文字をひろう(文選)

このワークショップは、参加者がラリー形式で工程を巡る仕組み。
全部で6つの段階が用意されています。
そのひとつめの作業が「文選(ぶんせん)」です。

活版印刷では、「活字」と呼ばれる小さな文字のブロックを使います。
この日使ったのは、大人の小指の先ほどの大きさのもの。
それを、印刷したい文字の分だけ木箱にひろう作業を「文選」というそうです。

ダイアリーの表紙に印刷する自分の名前の活字を、ひらがなでひと文字ずつひろいます。
会場でみんなが手にするのは、大日本印刷で10年ほど前まで、職人さんたちが使っていた本物の道具。
年季の入った活字や、「文選箱」という木箱には、歴史の重みがあります。

活字の根本をよく見ると、横線が入った面がどれにもあることに気づきます。
活字の軸のへこんだ部分は”ネッキ”といって、並べる方向を間違えないようについているんです。


【2】文字を組む・刷る(組版・印刷)

文選が終わったら、印刷です。
卓上活版印刷機が2台並ぶコーナーに進み、スタッフに原稿(手書きで自分の名前を書いた紙)と活字の入ったさっきの文選箱を渡します。

すると、すでに用意された表紙の組版に、名前の活字を組み付けて活字が印刷の途中で動かないよう、ハンドルでぐーっとしめて、版を完成させます。
これで、組版ができあがり。


次に、卓上活版印刷機のレバーを持ちます。
いよいよ印刷です。

まずは3回、インキを活字に移すためにレバーを軽く下げます。
ぐっ、ぐっ、ぐっ。
そして今度は、思いっきり下げて、紙にインキを移します。
ぐうう~っ!

ぱっ…とレバーを離すと、見事に自分の名前が紙に印刷されました。
特別調合だという青いインキが、紙の上で光ります。
これをスタッフがドライヤーで乾かします。


「あっ、青い字のところ触っちゃった」という子もちらほら。
刷ったインキは乾かさなくちゃいけないというのを、体で感じ取るいい機会とも言えます。


【3】シートを折って重ねる(丁合)

今までは表紙の作業でしたが、今度は中身を作る作業です。
コーナーで手渡されたのは、A4大の紙。
表と裏にそれぞれ4ページ分、計8ページ分のダイアリーが印刷されています。

でも、あれれ?
このダイアリー、日付の順番に印刷されてないなあ…?

すると、スタッフが教えてくれます。
「これ、変な順番で日付が印刷されてるでしょ。ページも上下にひっくり返っていたり。でもね、順番に折っていくと…ほら、ちゃんと日付順になるよ。本になれば順番が揃うように作ってあるんだよ」

折って折って…本当だ!
4分の1の大きさに折った紙は、内側をのぞくとちゃんと日付順に並んでいます。
ということは、折るとどうなるかを考えて印刷しなくちゃいけないということです。
これを最初に考えた昔の人は、すごいですね。
既に同じように追ってあるものを上に重ねていきます。


【4】表紙をのせて機械でとじる(製本)

さて、丁合の工程をしている間に、表紙のインキが乾きました。
今度は、いま折ったダイアリーの中身を表紙でくるみ、大きなホチキスのような中とじ機でとめて本の形にします。

とじ機のところは危ないので、スタッフがやってくれます。
「これは中綴じという綴じ方で、週刊誌などで使われているよ」
そう言いながら、真剣なまなざしで機械をがちゃん!

ここで使った足踏み式の大きな機械は今も、実際に使われているものなんです。


【5】まわりを切る(断裁)

中とじ機でとめて、ダイアリーが本のような形になりました。
でも、中を見ると、まだ折った紙がそのままになっていて、ページがめくれません。
最後に、まわりを切ってちゃんと読めるようにするのが「断裁(だんさい)」の工程です。

ここも危ないので、スタッフが切ってくれます。
18枚もの紙が重なったダイアリーの三方を、大きなカッターの刃が「じゃぎっ」という音をたてて断ち落とします。
ハンドルを下ろすスタッフの手にぐっと力が入って、迫力満点です。

さあ、これでダイアリーが完成しましたよ。


【6】スマホ型ケースを作って完成!

今回は、ダイアリーを入れるケースももらえます。
キットを折ってできたスマホ型のケースに、子どもたちはにっこり。
最後にホログラムシールを1枚ずつ貼って、「できた!」



【おまけ】印刷には「へえー!」がいっぱい

ドットDNPを運営するのは、大日本印刷という印刷会社です。
このワークショップのスタッフたちも、もちろん印刷のプロ。
会場では、知らなかった印刷の”トリビア”をたくさんお教えしました。

トリビア①職人さんは3秒に1個
活版印刷で登場する、膨大な数の活字が入った棚「うま」。
会場にも展示があり、びっしり詰まった活字にはうむを言わせぬ迫力があります。
大日本印刷の社内にも、10年ほど前まで活版印刷の職人さんがいたのです。
彼らは出版社などから来た原稿を見つつ、1時間に1500文字、3秒に1文字を棚からひろったというから驚き。
どこにどの文字があるか、暗記していなければできません。

トリビア②インキのご機嫌いかがかな?
ワークショップでも表紙のインキを乾かす場面がありましたが、インキは湿度に敏感です。
これは現在の印刷現場でも同じで、特に夏場はインキの乾きがよくないのです。
印刷工場では、夏場は冷房をきかせてインキがよく乾くようにします。
きれいな本にするためには、環境を整えることも大切なんです。


トリビア③こいつじゃなくちゃ務まらない
活版印刷から技術はかなりの進歩を遂げ、今の主流はオフセットと、グラビア印刷です。
版からインキをいったん別の場所に転写し、紙の上にのせる方法。

「でも、いまだにこっちじゃないとだめな印刷もあるんです。」とスタッフ。
こっちというのは、版を紙と触れ合わせて刷る、より原始的な活版印刷です。

彼が指さした先には、樹脂でできた黄色い版。
表面のデコボコが、1メートル以上離れていてもしっかりわかります。
これも活版印刷です。
漫画雑誌の印刷では、まだ現役です。

デコボコのおかげで私たち、漫画が読めるんだ!
そう思うと、樹脂の版が頼もしく見えてきますね。

取材・文/ 寺島知春
協力/ FIRST UNIVERSAL PRESS
佐々木活字店
講談社週刊少年マガジン編集部

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